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株式譲渡における税務

会社の存続のために事業承継(事業継承)を考える際に、M&Aという選択肢をとる経営者もいるでしょう。M&Aの手法には、株式譲渡・株式交換・新株引受・事業譲渡・合併・会社分割などがあります。ここでは株式譲渡における売り手側の税務についてご紹介します。

売り手側の税務

○ 個人株主の場合

売り手側が個人株主の場合、株式を売ることによって得られる利益(所得)には、申告分離課税によって所得税等が課税されます。その税率は20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別税0.315%)です。
申告分離課税とは、他の所得(給与所得及び不動産所得等)がいくらであっても、株式の譲渡所得に対して一律20.315%が課されるものです。
M&Aで自社株式を譲渡するようなケースでは、多額の売却益が生じることも珍しくありませんが、総合課税における最高税率約55%と比べると、株式譲渡に係る所得税等はかなり割安な税率だと言えるでしょう。譲渡所得は、株式の譲渡対価から株式の取得価額と譲渡にかかる経費を控除した金額になります。株式の取得価額とは、株式の取得原因ごとに以下のようになります。

① 株式を買った場合⇒⇒⇒購入対価
② 増資により株式を取得した場合⇒⇒⇒増資により会社に払い込んだ金額
③ 贈与または相続により取得した場合⇒⇒⇒贈与者または被相続人の取得価額を引き継ぐ
④ 取得価額が不明の場合⇒⇒⇒譲渡対価の5%相当額

なお、①から③までの取得価額が譲渡対価の5%相当額を下回れば、譲渡対価の5%相当額を取得価額として採用することができます。

一般的に、オーナー経営者がM&Aによって、自社株式を譲渡する場合、同時にオーナー経営者は役員を退任することになるはずです。オーナー経営者の役員退任にともない、役員退職金を会社から払い出し、その見返りとして株式の譲渡対価を引き下げるということも、M&Aの駆け引きとしてはよくあります。退職金は、在任年数に応じて退職所得控除があり、支給額の2分の1相当額が課税対象の所得金額になりますので、税負担も少なくて済みます。

また、買い手にとっても、退職金は、適正額であれば、M&Aの対象会社の損金になるので、対象会社の法人税の節税にもつながり、メリットになります。M&Aで会社を売却するオーナー経営者は、税引後のキャッシュを最大化するためのスキームつくりと交渉がポイントになると思います。

○ 法人株主の場合

売り手側が法人株主の場合、株式を売却することにより得られた利益は、株式を売却するその法人で生じる他の様々な利益、経費、損失と通算された結果の利益に対して法人税等が課税されます。法人税等の税率は、法人の規模によっても異なりますが、事業税の損金性を考慮すると実行税率は32%前後です。法人税率は、引き下げられている傾向にありますが、個人株主における株式の譲渡所得に対する分離課税の税率(20%強)に比べれば割高です。

しかし、法人株主が株式を売却するのではなく、株式を発行する会社に対して、自己株式取得をさせると、株式の売却ではなく、自己株式取得の対価は、資本の払い戻し及び配当とみなされて、ほとんど課税されないことにもなります。

事業会社が子会社を売却するようなM&Aだけでなく、資産管理会社が株式を売却するようなケースもあると思います。個人株主と同様に税引後のキャッシュを最大化するためのスキームと交渉がポイントになります。

M&Aにおいては、買収価額が下がってもスキームによっては、売り手の手取りキャッシュが多くなることもあります。M&Aをお考えで、株式譲渡における税務の詳細が知りたい方、東京千代田区で経営コンサルティングをお探しの方は、東京都千代田区九段南にある当社にお気軽にご相談ください。

当社ではM&Aをはじめ、企業の資金問題継承問題財務問題相続問題に対するサポートを、豊富な知識と経験で行います。しっかりと事業承継を行うことで中小企業が存続していけるようサポートしていきますので、事業内容の詳細についてはお気軽にお問い合わせください。