株式会社セントラルビレッジ

種類株式の活用について

種類株式は、かなり昔から制度としてはあったのですが、実際に使われだしたのはこの数年です。特に非上場株式の資本政策や、事業承継(事業継承)を円滑に進めるツールとして、重要性が増しています。
東京千代田区で事業承継(事業継承)のコンサルティング業務を行っている当社では、数々の種類株式の設計と導入を支援してきました。その経験上、非上場会社における種類株式の本質と活用のポイントを、簡単にご説明します。

種類株式とは?

会社が発行する株式の株主は、以下の4つの権利を持っています。

  1. 株主総会における議決権
  2. 配当を受け取る権利
  3. 会社解散時に残余財産の分配を受ける権利
  4. 株式を譲渡する権利

種類株式とは、それぞれの権利を制限したりプレミアムをつけたりするもので、その組み合わせは無限です。事例は多くはありませんが、上場企業においても活用されているケースがあります。

たとえば、大手の都市銀行が財務的に危機に瀕したときに、優先株式が発行され、その優先株式を国が引き受けました。この優先株式は、普通株式に比べて、配当が優先され、議決権がないものでしたが、いくら優先株式とはいえ、利益が出なければ配当金は払えません。配当金が払えない状況になれば、議決権がある普通株式に転換するというものです。

種類株式自体が市場で上場しているケースは少なく、現状では伊藤園の配当優先無議決権株式が唯一の例です。伊藤園の場合、優先株式には議決権がない代わりに、普通株式の1.25倍の配当が支払われることになっています。
最近では、トヨタ自動車が面白い種類株式を発行しました。株主の長期保有を促すことを目的に、議決権があって一定期間は売却できないものの、一定期間後の将来には、普通株式へ転換するか、あらかじめ決めた金額で会社が買い戻すことが約束されたものになっています。

非上場会社における種類株式のポイント

非上場会社では、基本的に所有(株主)と経営(社長)が一致するケースが多いのですが、経営者の相続などの諸般の事情により、経営に関与しない株主に株式が分散するケースも少なくありません。そのような場合、会社の取締役として役員報酬を得ている大株主は、会社の経費にならない配当を得ても、高い所得税を払うだけでメリットを感じません。

一方、経営に参加しない少数株主は、譲渡制限がついている非上場株式を保有していても、経営にも参加できず、簡単に売却もできないので、高い配当を得られれば、大いにメリットを感じます。

先に説明した株主の権利の中でも、経営者が重要視する権利は議決権であり、少数株主に恩恵を与えるのは配当受給権にプレミアムをつけることです。非上場会社においては、株主の利害を調整するための策として、種類株式は大変有効です。非上場会社における種類株式の設計のポイントは、利害の調整とリスクのコントロールについて、株式の権利として具体化することにあります。

種類株式の導入方法

種類株式を定款に規定するためには、会社の株主総会において特別決議(3分の2以上の賛成)を得ることが必要です。既存の普通株式の一部を種類株式に転換するためには、種類株式に転換しない株主を含めた全ての株主の同意が必要となります。株主数が極端に多かったり、敵対する株主がいる場合、簡単な手続きではありませんが、「全部取得条項」や「取得請求権」などを駆使して、導入にこぎつけることも不可能ではありません。

なお、種類株式については、平成21年に相続税法上の評価の方針が国税庁から公表され、基本的に種類株式の評価は普通株式と変わらないことになりました。種類株式を非上場会社でも安心して活用できるようになったきっかけは、その評価の方針が明確になったことにあります。

しかし、種類株式の導入が、全株主の所有する株式の評価に全く影響がないというわけではありませんので、株価評価への影響も考慮してプランを検討する必要があります。種類株式の専門分野としては、弁護士、司法書士、税理士などの専門領域が重なった分野だと思います。

当社は東京千代田区を拠点に、事業承継(事業継承)のコンサルティングを専門に行っています。
特に、非上場会社の株式に関するあらゆるご相談に対して、M&Aのアドバイスや承継対策のプランニング、廃業と資産売却のコンサルティングなど、様々な視点を持って日常的にお応えしています。種類株式についての導入例も少なくありません。現実的な選択肢により円滑な事業承継を実現できるように全力でサポートいたします。後継者問題や資本政策に悩まれている経営者様からのご相談をお待ちしております。