株式会社セントラルビレッジ

従業員持株会を活用して自社株対策を

事業承継(事業継承)のコンサルティングをしていると、従業員持株会や役員持株会についてのご相談をよくいただきます。
また、当社からのご提案の中で、持株会の活用をお勧めすることもよくあります。
ここ数年の制度的な環境の変化として、別ページでも解説している種類株式の導入がしやすくなったこともあり、持株会と種類株式を並行して検討及び導入する傾向が多くみられます。また、昔に組成して、現状では行き詰まっていた持株会を、種類株式の導入によって活性化した例などもあります。

従業員持株会とは?

従業員持株制度は、一般的に民法上の組合として設立されます。
民法上の組合とは、会社や財団のように登記された法人格はありません。
持株会は組合員(会員)で構成され、持株会の財産は、会員の共有財産であり、持株会の収入やコストも共有されます。
課税上、持株会は、会社のように財産の所有者ではなく課税対象にもなりません。
実質的な財産の所有者である各会員が、その財産から生じる所得に対して納税義務を負うことになります。
民法上の組合である持株会は、基本的に自治組織であり、法令や公序良俗に反するものでなければ、会員同士の合意を前提に、あらゆる約束事が、持株会内で規約として定めることが可能です。

上場会社の持株会と非上場会社の持株会の違いは?

上場会社の従業員持株会制度は、毎月一定額の給与天引きにより、会員から出資金が払い込まれます。そして、持株会は会員からの出資金を原資として、証券市場から自社株式を購入します。
上場会社の持株会では、通常、半年に1回、各会員にその持分に応じた単位株を払い出します。各会員に払い出された株式は、各会員の証券口座で保有します。
一方、非上場会社の持株会では、自社株式が証券市場で購入できるわけではないので、定期的に出資の払込を受けることはあまりありません。
会員の募集も、自社株式が購入できる状況が整った段階で、まとめて応募します。
そして、最大の違いは、非上場会社の持株会では、会員に株式を現物で持ち出すことを認めていない点です。もちろん、会員が退職などに伴い、持株会を退会する場合においても、株式の持ち出しは認めず、出資金は金銭によって精算することが一般的です。

従業員持株会の効果

○ オーナー家の事業承継負担の軽減

後継者が親族の場合には、原則的評価方式により算出された評価額が高額となるケースは多々あります。しかし、同族関係者に該当しない従業員持株会の場合は、配当還元価評価方式が適用されるので、低額で株式を取得できます。
つまり、オーナー家で承継するべき自社株式の一部について、従業員持株会に保有してもらうことで、オーナー家の自社株式の承継に係る税負担を軽減できます。

○ 株式の社外流出を防ぐ

個人的に社員が自社株式を所有している場合には、社員の退職、相続、贈与などにより自社株式が企業と関係のない株主へと分散する恐れがあります。そのような状況に陥らないためにも、株式の持ち出しを認めない従業員持株会規約によって、自社株式を保護できます。

○ 従業員のモラルアップと財産形成

従業員持株会は、同族株主とは血縁関係のない少数株主ですので、税務上の株価評価は配当還元評価方式による低い評価額で、自社株式を取得できます。
低い株価で取得した株式から、安定的に配当が得られ、出資元本の毀損リスクが少ないというのが、従業員の持株会参加への動機付けにもなり、メリット(従業員の財産形成)です。
しかし、あくまでも配当金ですから、業績に応じた支払が常識であり、会社の業績が配当に直結することを身をもって経験することで、会社の業績への関心が高まり、経営参加意識の向上につながります。

設立する際の留意点

○ 株式の買取価額の明記

従業員持株会規約には、退職した従業員からいくらで自社株式を買い取るかを明示しておく必要があります。基本的に入会時と退会時の株価は同額とし、キャピタルゲインもロスも出さず、配当によって報いていく方針を明確に出すべきだと思います。

○ 既存の従業員株主の取り込み

既存の従業員株主については、金銭の出資ではなく、自社株式を持株会に組み入れていただき、持株会の会員になっていただくことが可能です。
先にも申し上げた通り、持株会自体は法人格がなく、財産の実質的な所有者は会員ですので、既存の従業員株主が持株会に自社株式を組み入れたとしても、原則的に課税の問題は生じません。

○ 従業員持株会の会員資格

従業員持株会の会員資格は、最初は限定的にし、状況を見ながら、徐々に広げていくべきでしょう。たとえば、当初は課長職以上に限定し、状況を見ながら、対象の職位を下げたり、一定の勤続年数要件を満たした全従業員に拡大することが望ましいと思います。
株式というのは経営者にとってはなじみがあっても、株式への投資経験のある人は一般的には10人に1人と言われています。株に対するイメージは、大儲けする可能性がある一方で、大損するリスクがあるような資産ということもよく聞きます。
まずは、経営に対して一定の理解が得られそうな層からスタートすることがよいでしょう。

○ 配当優先株式への転換

従業員持株会には配当を出してあげたいが、過半数の株式を保有するオーナー経営者自身は、配当金をもらっても税負担が大きすぎるのでもらいたくないと考えるケースも多いと思いますが、従業員持株会が保有する株式は配当優先株式として普通株式に比べて配当を厚くし、普通株式への配当は抑える方向で配当政策を考えれば、会社の配当負担はそれほど大きくなりません。
持株会以外の少数株主との兼ね合いもありますが、種類株式の導入も持株会の設計と併せて検討することをお勧めします。

○ 奨励金などの持株会取得支援

従業員持株会に参加するためには、従業員の金銭的な負担は避けられません。
従業員持株会に参加してくれる従業員に対する、奨励金を支給するケースは珍しくありません。
奨励金以外に持株会参加者に対して、出資資金の一部を会社から貸し付けることも従業員にとってはメリットがあります。
例えば、出資額100に対して毎年10%程度の配当(年間10)が見込める場合に、出資額の半額50を会社から年1%の金利で借りた場合には、自らの出資50に対するネットの利回り(金利1を控除した配当受取額9)は18%にもなります。
奨励金や貸付なども持株会を活性化するためには重要なポイントになります。

従業員持株会の設立や運営、種類株式の設計等に関するご質問、ご相談は、お気軽に当社へお問い合わせください。
東京に拠点を構えている当社は、事業承継(事業継承)のコンサルティングに注力しています。従業員持株会の設立に限らず、同属承継・M&A・廃業などの様々な事業承継(事業継承)の方向性に対するご相談に応じております。客観的な立場で課題を整理した上で、非上場会社の本音に対して柔軟に対応し、実現可能なプランをご提案できるよう努めておりますので、お気軽にご相談ください。