廃業は倒産とは違います。会社が負わなければならない義務を完全に履行して、事業を閉じるのが廃業です。事業承継(事業継承)の方向性が定まらないまま、業績不振を引きずり時間が経過すれば、廃業も困難ということにもなりかねません。 廃業することで、事業を継続していれば生じないコストも発生するため、廃業できずに事業を継続せざるを得ないこともあります。 ここでは廃業したくてもできない理由と廃業の検討ポイントをご紹介します。
廃業する際にも費用がかかる
廃業する際にかかる費用には、以下のようなものがあります。廃業に伴い様々な登記や法手続きが必要になり、費用がかかります。税理士や行政書士、司法書士などに手続きの代行を依頼すればその分の費用もかかることになります。
○ 店舗・工場など賃貸で借りていた場所の原状回復費用
業務を行っていた場所が賃貸であれば、返却時の原状回復が原則です。長年利用した場所や多くの設備を揃えていた場所であれば、原状回復を行うにも多くの費用がかかることがあります。
○ 解約金・違約金など
取引先や関係業者との契約で解約金や違約金の約束を交わしていれば、その費用もかかります。
○ 運転資金
廃業を公表したとしても、その瞬間に廃業できるわけではありません。新たな注文や予約を断り、既に受けた注文や予約に対応したり、顧客を同業者に紹介したりすることにしばらくは時間を使います。つまり、収入がほとんど見込めない中で、事業を行わなければならないので、そのための運転資金がかかります。
現状認識の重要性
廃業するためには、時間とコストがかかります。廃業を選択肢のひとつとして検討するのであれば、廃業を前提としたアクションリスト、おおまかなスケジュール、コスト及び財産の棚卸しをして、課題を明確にしなければなりません。
特に財務面では、廃業を前提にした貸借対照表を作成することが必要です。通常、非上場会社の貸借対照表における資産は取得価額で計上されていて、退職給与引当金などの潜在的な費用は計上されていません。そのため、清算を前提とした資産価額の修正と潜在的な負債の計上をします。
たとえば、製品を作る機械をいざ売却しようとしても、買い手が見込めなければ、価額はゼロに修正します。バブル期に買った店舗用地の売却見込額は帳簿価額の半額であれば、半額に修正します。厨房設備のリース契約は、途中解約によって多額の違約金が発生する場合は、違約金を負債として計上します。
廃業を選択すべきケース
会社には様々な価値がありますが、事業価値に比べて資産価値が高いような場合は、理論的には廃業を選択することが正しいと言えます。
たとえば、都心近郊で教習所を経営している会社があったとします。人口減少と若者の車ばなれにより年々教習生が減少し、今後も業績の回復は見込めない状況の中で、教習所用地は高速道路のインターチェンジからのアクセスがよく、物流倉庫に転換すれば、かなり高い賃料が見込めるとしましょう。このようなケースでは、低い事業価値が高い資産価値を殺しているといえます。
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