株式会社セントラルビレッジ

非上場会社の株価

事業承継(事業継承)のコンサルティングは、非上場会社の株式の承継だけがミッションではないのですが、最大のテーマであることは間違いありません。
事業承継の方向性がどのようなものであったとしても、株式価値の評価額(一言でいえば「株価」)が、関係者にさまざまな影響をおよぼします。
上場会社については、金融商品取引法のもとで、証券取引所における厳格なルールとシステムをベースに、不特定多数の参加者が行う売買の結果が、株価になるわけです。
しかし、非上場会社においては、そもそも株式が売買されている実例がほとんどありません。以下に、「株価」の考え方について、私見を申し上げます。

第三者に対する株式譲渡の株価

実際に、非上場会社の株式は、第三者を相手に売買してみないと、本当の株価はわかりません。
非上場会社の株式を売却する場合は、特定の買い手と相対で取引することになります。この場合、売り手がどうしても売りたい意向が強ければ、株価は安くなりがちです。一方、買い手がどうしても買いたい意向が強ければ、株価は高くなりがちです。
どの程度の株数を売却するかによっても、株価は変わります。たとえば、発行済株式の全株を売却するのであれば、買い手は会社の完全な支配権を得る訳ですから、株価にプレミアムがついても納得できるはずです。一方、発行済株式の3分の2、2分の1、30%相当又は10%相当・・・と、支配権によって買い手にとっての価値が変わることはわかると思います。買い手によっては、50%以下では安くても買わないという判断をすることもあると思います。
発行済株式の全株を買う場合でも、買い手の立場によって考え方はかわります。
たとえば、事業のシナジー効果が見込まれる同業者は、高く評価したとしても、全く事業内容が異なる買い手は、単純に買収対象会社単体の収益力しか評価しないでしょう。
極めて優秀なオーナー経営者の高収益会社は、オーナー経営者の能力によって、高収益が維持されているとすれば、オーナー経営者が辞めてしまう前提では、株価を高く評価できません。
会社が所有する資産に対する評価も異なります。
高収益のメーカーの製造設備は、実際にその設備を売却しても、ほとんど無価値だとしても収益力の源泉ですから高く評価されます。
一方、会社が、余剰資金で別荘を買ったとしても、第三者から見れば、事業収益に直接貢献するものでもなく、すぐに買い手を見つけることが難しいものであれば、評価の低い資産だと言えます。

株価の評価のご依頼をいただくこともありますが、会社の事業や組織の特性、所有資産の内訳や用途、潜在的なリスクや債務、前提条件やシチュエーションを十分におききした上で、株価の目安とその株価の変動要素をご提示しているのが実情です。

相続税法上の株価

相続税法の財産評価基本通達において、非上場会社の株価について、その計算方法が示されています。
財産評価基本通達は、非上場会社の株式を相続又は贈与した場合の相続税又は贈与税を算出するための規程です。
税金計算の基礎になるものですから、どのような会社の株価に対しても評価ができるという網羅性が満たされています。
財産評価基本通達は、非常によくできた規定なのですが、あまりに複雑にし過ぎると、実際に運用が困難になるので、ある程度の割り切りで、規定が作られています。
この割り切りによって、場合によっては、不合理な現象が生じます。
不合理な現象とは、具体的にどういうことか?

  1. 相続税法上の株価の計算ロジックについて原則的に、会社の株価は、その会社の利益によって、大きく変わります。
    会社の利益水準によって、相続税法上の株価は10倍にもなれば10分の1にもなります。儲かっていれば株価は上がり、赤字であれば株価は下がります。
    ただし、その会社の業績が変わらなくても、世間一般の株式市況や上場会社の業績のトレンドによって、株価が大きく変動することがあります。
    まれに、業績がダウンし、売り上げ規模が下がると、逆に株価が上がることもあります。これは、会社の規模によって、株価の算定方法が若干異なることに理由があります。
    多少、マニアックな内容になりますが、相続税法上の株価の計算仕組み、どのような場合に株価が極端に上下するかという実例及び不合理な現象が生じる具体事例などを[参考資料①]にまとめましたので、是非、リンク先の資料をご覧ください。

  2. 税務上の株価と現実の会社の価値 A社とB社という2つの会社があり、財産評価基本通達に基づいて算出株価が同じなのに、M&Aで全株を第三者に売却しようとした場合にA社とB社は全く異なる評価になることがあります。
    A社は、M&Aで買い手がつかないものの、相続税法上の株価はそれなりにあります。
    B社は、相続税法上の株価を大きく上回った株価でM&Aの買い手がつきます。
    A社のような会社の株式を相続して、相続税を取られたらたまったものではありません。
    ご興味のある方は[参考資料②]をご覧ください。税務上の株価算定方法の不合理な一面を、よくご理解いただけると思います。

非上場会社の株価は、さまざまな考え方があります。同族間の相続や贈与、M&A、大株主からの買取要求への対応、少数株主の排除等、非上場会社の株式について、さまざまな経験が必要です。非上場会社の株価についてのご質問、ご相談は、お気軽に当社へお問い合わせください。
東京都千代田区に拠点を構えている当社は、全国各地で、事業承継(事業継承)のコンサルティングに注力しています。同属承継・M&A・廃業などの様々な事業承継(事業継承)の方向性に対して柔軟に対応してきた知見をベースに、自社株式に関してお悩みをもつ経営者のご相談をお受けしております。