親族外への事業承継(事業継承)
事業承継(事業継承)における後継者不足は年々深刻化しており、親族外への事業承継(事業継承)を選択しようとするオーナー経営者様も少なくありません。親族外への事業承継としては、MBOやM&Aなど様々な方法がありますが、ここではMBOに焦点を絞り、特徴や注意点についてご紹介いたします。
MBOを用いる意義
「現代版のれん分け」とも呼ばれるMBOは、オーナー以外の役員等の経営陣に、株式の一部・全部を買い取ってもらい事業を継承するものです(従業員に事業を継承する場合はEBOと呼ばれます)。同じ企業文化の中で育ってきた人間が経営者の地位を引き継ぐため、社風や企業の伝統を守りやすいでしょう。
M&Aで発生し得る企業文化の衝突・摩擦の心配が少なく、社風・伝統の大幅な変化による人材の流出も未然に防げるのがMBOの利点となります。
MBOの現実
事業承継の選択肢として、MBOを志向するオーナー経営者は多いのですが、実際にMBOによって事業承継ができるケースは多いとは言えません。 MBOが簡単ではない理由は以下のような問題が多々あるためです。
- 財務的な問題
① 事業承継者が会社の有利子負債の個人保証を引き継がなければならない
② オーナー経営者が引退するにあたり、引退後の生活に必要なまとまったキャッシュが必要
③ 事業承継者は、オーナーから株式を買い取る資金力に乏しい
④ 会社には、オーナーに退職金を支払う財務的な余力がない
- 後継者の問題
① オーナー経営者が考えるほど、経営幹部の会社とオーナーに対するロイヤリティーは高くない
② 中小・中堅企業の経営幹部には、技術・製造、営業・企画、人事・総務、経理・財務等の広範囲にわたって管理できる人材が少ない
③ 後継者の専門性をカバーできる、他の経営幹部人材が少ない
- オーナー経営者の問題
① 会社の財務状態を無視した退職金や自社株式の買取を希望する
② 後継者候補の経営方針が、オーナー経営者の経営方針と異なることを受け入れられない
③ 引退後も会社に対する影響力を残し続けることを希望する
④ オーナー経営者から後継者に対して、会社の現状及び事業承継のスケジュールとスキームについて、十分な説明をせず、相互理解がされていない
MBOを成功させるポイント
- オーナー経営者が経済的に豊かになる
オーナー経営者は、後継者に事業を承継した後、しばらくは後見人として後継者を支えることになります。しかし、後継者が社内外に認められ、新体制が固まれば、前経営者は静かに身を引くべきです。
当然、会社からの収入はなくなります。前経営者には会社との直接的な関係が切れても、第二の人生を豊かに暮らせる経済的な基盤が必要です。「貧すれば鈍す」、後継者を大所高所から陰で支えるために、まず、経営者が豊かでなければなりません。
- 会社の財務体質を強化する
後継者にとって、過去の借入金の債務保証を引き継ぐことは大きな負担です。
また、オーナー経営者に対して十分な退職金を支払ったり、オーナー経営者から自社株式を買い取る資金を負担するためには、会社の財務状態が健全であることが必須です。
事業承継を進めようとする段階では、ほぼ無借金の財務状態(手元の現預金で、有利子負債をいつでも完済できるレベル)であるべきだと思います。
- 現状と事業承継計画を後継者と共有する
非上場会社では、決算書はブラックボックスになっていることが少なくありません。まず、後継者候補に会社の財務状態を理解させることが必要です。
次に、どのようなスケジュールとスキームで後継者候補に経営権と自社株式を承継するかを理解させることが必要です。
後継者候補の立場に立てば、現状の問題点を把握した上で、自分が背負う責任、経済的負担及びリスクの全体像を把握できなければ、オーナー経営者を信頼して覚悟を決めることができません。
- 後継者を支える経営体制を構築する
創業オーナーは、創業期に資金調達に奔走し、税務調査で冷や汗を流し、設備投資を決断し、人事制度が確立されていない中で、従業員の昇給昇進を決めてきました。
創業オーナーの能力は、会社を創業する経験がなければ身に付きません。
後継者候補が不得手な分野の人材を、意識的に充実させ、後継者候補の覚悟が決まった後は、他の幹部とも事業承継計画を共有し、複数の幹部で課題解決をしていく体制が必要です。
東京都千代田区にある当社では、コンサルティング専門会社としてオーナー経営者の事業承継問題に対する意思決定を支援しています。特に、事業承継のプランニングや事業承継に向けた環境整備を重視しており、オーナー経営者のあらゆる疑問にお応えいたします。同族承継やM&A、廃業など様々な方向性からご相談を承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。